国際結婚のひとにとっては、身近な「国籍」問題

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夫と出会う前までは「国籍」など意識したことはなかった。夫と出会ってからは、常に日米の法律と向き合わざるを得ない。

夫はアメリカ国籍。私は日本国籍。
国際結婚とは、まさに国籍が違うもの同志の結婚をさす。親・配偶者・子供と家族がふたつの国にまたがる。行ったり来たりはふつうのこと。
基本的にはどちらの国に住むのか? むずかしい夫婦の選択だ。
どっちにも家族がいる身の上、両方の国に滞在できる「権利」がありがたい。

geralt / Pixabay

1.  日本に住む

いま私たちは日本に住んでいる。結婚を機に私がアメリカに渡り向こうに住んでいたが、その後日本に夫と帰国して、結婚生活期間は日本の方が長くなった。
どちらの方が住みやすいか、生活しやすいか、いつも考える。どちらも一長一短だ。

在留許可
日本人の私は日本に無条件に住むことができるが、外国人の夫はそうではない。夫の身元保証人は私で、一家の世帯主は私で、夫は日本国から在留許可をもらって住む。里帰りでアメリカに行った後は、日本に再入国許可をいただいて入国する。永住権はまだ申請していない。

戸籍
戸籍は、結婚と同時に親元から独立した形で新戸籍となる。戸籍に入るのは日本国籍を持つ者のみなので、戸籍に属する人間は1名。【番号1】私だけが戸籍にいる状態で、下の欄外に夫の氏名や、婚姻事項等が記されている。

婚姻届
外国で外国方式でより結婚したときには、日本の法律に則りきちんと日本の役所にも婚姻届を届け出ないと、日本の法律上は結婚したことにならない。何もしないで日本に帰国すると、独身者のまま、パートナーが配偶者として取り扱われないので注意が必要だ。

戸籍
戸籍謄本の写しが必要で取得しに行ったとき、役所の女性に「あなたはまだお子さんがいないから、ひとり戸籍ですね。間違いないですね?」と言われて、「ひとり戸籍」ねぇ…。公の機関に勤めていていろんなひとが来るだろうに、こういうことばづかいって、どうなのかなぁ?と感じたり。あとからよくよく考えると、あの役所の女性は「あなたみたいな日本人女性が出産すれば子供は自動的に日本国籍を取得するから、自動的にこの戸籍にはいるんだけどね…。そのときはひとり戸籍じゃなくなるのよ。」と悪気なくただ説明したかっただけなのかもしれない。

住民登録
私たちが日本に引っ越ししてから、制度にもいろいろ変更があった。
・住民票にも外国人の記載がされるようになった。
・日本に住む外国人の夫にも、マイナンバーが通知された。

少しは日本でも外国人が幽霊じゃなくて動物じゃなくて、人間として扱われるようになってきたのかな? ちょっと皮肉が入っているが、そんな心境だ。
夫が将来日本の永住権を取得することがあっても、日本国に「帰化」しないかぎりは、
外国人=外国籍のままだ。

私は日本国籍を捨てる気もないし、夫もアメリカ国籍を捨てる気もない。
夫は実質一人っ子。父はすでに他界して10年以上がたつ。日本に住む私たちにとって、アメリカに残してきた一人暮らしの年老いた母親だけが唯一の気がかりだ。

2. アメリカに住む

私が夫と結婚すると決まってから、渡米前にアメリカ在住30年以上のベテラン日本人の方にお会いする機会があった。

「アメリカ人と国際結婚し、家族・仕事もすべてアメリカ。両親が亡く なってからは、用事も無くなったので、めったに日本に来なくなりました。たまに日本に来るときは、どこも泊まるとこがないので…ホテル滞在ですよ。」と寂しそうに言っていた。兄弟の家なんて遠慮があって、迷惑かけたくないので、泊まれないと。
その方は、日本に来るときは、アメリカパスポートで入国してアメリカに帰っていく二重国籍者であった。米国市民権をとっているが「日本国籍は離脱していない」 と言っておられた記憶がある。

アメリカのパスポートで行き来するそのかたのお話をききながら、「私もいずれはそうなるのかな?」「アメリカ人と結婚してアメリカに住むって、日本を捨てるってこと?」と、ふと寂しさがこみあげた。その頃は、永住権と米国市民権の違いも、何にも知らなかったもので。

3. ある米国永住者の悩み

去年から日本に住む母親が入院の為看病が必要となり、去年半年、今年も日本に長期で帰国していましたが、グリーンカードを保持するのが難しくなってきました。 (グリーンカード保持して15年です)

日本からアメリカへの入国は主人と一緒でしたが、「今年はこれ以上アメリカから出ると永住権は没収になるので気をつけるように。」とイミグレーションで注意されました。(グリーンカード保持者は180日以上アメリカに居住しなければならないとのことです)

長年アメリカに住む米国永住者が、日本にいる親の介護でたびたび日本に長期滞在するため、 ・(アメリカ滞在日数が少なくなってきたので)グリーンカード保持が難しい状況にある。
・米国市民権をとるよりほかない。(アメリカ人になれば、居住要件は関係ないので)
・でも日本国籍は手放したくない。(日本人でいたい。国籍を喪失したくない)
という内容の弁護士への相談記事を読み、胸が痛んだ。

グリーンカードを保持できなくなったら、アメリカ人の夫とは、アメリカで生活はできない。アメリカの夫か日本の母親か…の選択はあまりに酷だ。

国際結婚で渡米後に離婚することもあるだろう。配偶者が亡くなることもあるだろう。自分が年老いて、老後は日本で暮らしたいと望郷の念にかられるかもしれな い。アメリカで選挙権はなくても日常生活に支障はないし…。と、そんなもしものことを考えて、市民権を取らずに永住権(グリーンカード)保持にとどめている人が多いのだろうと思う。しかし、アメリカにおいての永住権者は、居住要件が求められる外国人であることには変わりない。

その相談について、弁護士の近藤氏は下記のように意見を述べている。

年老いた両親が日本におり看病などの目的で日本に長期滞在を余儀なくされる日本人たちが、日本に長期滞在するが故に長年居住してきた(配偶者の国である) 米国やその他の国での永住権を失うことになるというような状況を回避するためにその国の国籍を取得するという事情に対して、これを法律で禁じる必要が本当にあるのかもう一度具体的に当事者たちの事情も考慮して再考する時がきたのではないでしょうか。
(出典)アメリカ在住 Yuri Kondo Attorney at Law              http://yurikondo.com/10-13.html 「日米二重国籍」

4. 時代とともに

国家公務員をはじめとして、国会議員はもちろんのこと国家権力を行使する職に就く人には、利益相反防止のために二重国籍は絶対に不可である。このたびニュースで話題となった政治家の蓮舫氏。いまは民進党の代表という立場。このように国の重要な職務に身を置く立場であるがゆえ、今回の世間の批判はやむをえない。

ただ、一般の人にとってはどうだろうか。在米日本人で上記のかたと同じような悩みを抱える人も少なからずいるはずだ。在米弁護士・近藤氏がおっしゃるとおりだと思う。

「二重国籍でよい」と手放しで擁護するわけではないが、世界がボーダレス化する時代の流れに応じて日本国籍を喪失しなくても済むように、こうした個人の事情にも対応できるよう法律にも柔軟性が加えられてもよいのではと考える。

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