●税chie●白色?青色?初めての確定申告の準備は何から始める?

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昨日は、横浜南税務署で所得税の「記帳説明会」の講師をさせていただきました。
初めて生ずる事業所得や不動産所得について確定申告が必要になった方のための説明会です。
初めて記帳に向き合う人のために、できるだけわかりやすいことばでご説明を心がけました。

281027bookkeeping seminor at tax office

テキストとして記帳説明会で使用したのは
「帳簿の記帳のしかた(-不動産所得者用-)(-事業所得者用-)28.4版」

申告納税制度

申告(しんこく)—-毎年「3月15日が確定申告の期限です」と見聞きすることから、おなじみのことばです。この場合の「確定申告」は、所得税のことをいっています。
「申告」とは「自分の税金について国に報告をすること」ですよね。

我が国の所得税は、納税者の方が自ら税法に従って
所得金額と税額を正しく計算して申告し、納税をするという申告納税制度を採っています。
(出典)税務署『帳簿の記帳のしかた』「はじめに」より

納税義務があるかどうか自分で判断する
納税義務があるならどれぐらいか自分で計算する
そして自分で計算した結果に基づいて、自分で申告・納税の手続を行う
ルールは、税法という法律に定められているので、それに従う。
これが「確定申告」です。

納税者本人が申告によって納めるべき税金額を確定する方法を「申告納税制度」といいます。
実は所得税だけでなく、法人税・相続税・贈与税・消費税(+一般には縁のない酒税)も申告納税制度によっています。

あらためて考えてみると、民主主義的な制度ですよね。
だれから言われるわけではなく、自分で計算して報告した結果に基づいて、税金を納めるのですから。

新規に事業所得者・不動産所得者に該当する場合

ここでは所得税の確定申告を初めて行う必要が出てきた人について考えてみましょう。
日本では一般的には会社員や公務員など給与所得者が多いので、言われるままに必要書類を会社に提出さえしておけば、税金や社会保険の面倒なことは会社が全部やってくれています。
所得税も「源泉徴収制度」によって、給与から差し引いてくれています。
これまで税金のことなんてぜんぜんやってこなかったし…確定申告をしたことがないから…
税金のことなんてぜんぜんわからないという人も少なくはありません。
自ら進んで事業を始めたという人ばかりでなく、起業するつもりなんてなかったのに、結果的に事業者になってしまったという人もいるでしょう。

たとえば…新規に事業所得者・不動産所得者になった人の例

さまざまな理由で、新規に事業所得者・不動産所得者になる場合が考えられます。
下記に例をいくつか挙げてみます。

・勤めている会社にいわれて、急に従業員から契約者扱いになった。(給与所得→事業所得)

・脱サラした。独立した。定年退職した。でも、前に勤めていた会社から「契約」で引き続き 仕事を受けてやっている。(給与所得→事業所得)

・大きな会社・お店で働いている。会社員と同じような環境だが「雇用契約」ではなく、個人 事業者としての「業務委託」という形態になっている。(事業所得)

・実店舗はないが、インターネットショップで販売を始めた。(事業所得)

・ヨガ・ピラティス・ダンスなどのスポーツインストラクター、音楽・絵画・そろばん・習字 などのおけいこごとの先生、日本語・英語などの語学講師をしている。(事業所得)

・相続で不動産をもらった。取得した不動産を貸し付けて賃貸料が発生することになった。(不動産所得)

・転勤があり、住んでいた自己所有物件を賃貸に出した。(不動産所得)

事業所得者・不動産所得者の義務とは?

税金? 申告納税制度? 何からやればいいの? と思う方も多いでしょう。
すべての人がやらなければならないこと、それは、帳簿の記帳保存です。

事業所得不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての方
(所得税及び復興特別所得税の申告の必要がない方も含みます。)
帳簿備え付け、これらの業務に係る取引を所定の方法により記録し、
一定期間保存することが所得税法で義務付けられています

(出典)税務署『帳簿の記帳のしかた』「はじめに」より

・帳簿を備える
・帳簿に記録する (きちんと整理して、わかりやすく記録する)
・帳簿を保存する (法定帳簿7年)

収入の規模に関係なく、所得税の申告の必要がない人でも、帳簿の記帳保存義務があります。

白色申告・青色申告のちがい

necessary books for taxpayers

これまでに何も税務署に手続きを行っていなければ、原則全員「白色」申告に該当ですね。
事業による収入が本当に小さい人で利益がない人、収入が年によってあったりなかったりと単発的な人は、簡単に収入と経費を記帳する「白色」でもよいかもしれません。

帳簿の記帳保存義務はすべての人にあります。
少し頑張って青色申告の簡易帳簿にするのと、白色の帳簿では、あまり差がありません。
「白色がラク」だとは、もういえませんね。
少なくとも毎年確定申告が必要になる人、利益が見込まれる人は、早めに青色申告を始めておくことをおすすめします。
青色申告特別控除65万円をねらう方は、ぜひ会計ソフトを使用しての帳簿記帳を。
会計ソフトを使えば簡単だといいますが、どこに数字を入れたらよいのか悩まないためにも、最低限の簿記の知識は必要です。

青色申告

青色申告はより精度の高い記帳が求められますが、そのごほうびとして各種の税金を計算するうえでの「特典」があります。

青色申告の主な特典
・青色申告特別控除(最高10万円または最高65万円)
・事業専従者給与額の必要経費算入
・純損失の繰越・繰戻

青色申告をしたい場合には、税務署に申請が必要です。
「所得税の青色申告承認申請書」

同一生計の配偶者やその他の親族に対する給与を必要経費とする場合
あらかじめ税務署に届出が必要です。
「青色事業専従者給与に関する届出書」

提出時期
・青色申告を始めようとする・初めて適用を受けようとする年の3月15日まで
・1月16日以降新たに事業を始めた場合は、開業の日から2ヶ月以内

一度青色申告者になると、とりやめされない限りは青色申告者です。
期限日までに青色申告を毎年続けて提出しましょう。

白色申告

白色申告は日々の合計金額のみ一括記載ができる簡易な方法がOKなど、ざっくり記帳が認められています。少しラクな分、青色申告のような特典はありません。

さらに、白色申告で注意するべき点として、「推計課税」があります。
・帳簿や事業の内容を示す書類がない、または不十分
・帳簿がきわめて不正確で信用性がない
こういった場合に税務署側が推計した数字をもって課税する制度です。
「あなたの所得はこれだけあると認められますので、この金額の税金を払いなさい。」と、
税務署にいわれた場合には抗弁できません。従うほかないのです。
これはとっても怖いことですね。
ちなみに、この「推計課税」、青色申告者には適用できないことになっています。

自分のために記帳しよう

事業で忙しく動いていると、日々目の前の仕事に追われて、経理が後回しになってしまうという方も多いでしょう。それでも請求書や領収書の整理だけはやっておきましょう。
資料がないことにはだれにも事業の内容を伝えることはできませんから。
記録をつけないと、ほんとのところ、儲かっている?儲かってない?
事実がわからないですよね。

記帳は義務だからやらないといけない…申告に必要だからしょうがない…
と義務感に駆られてやるのは楽しくないですよね。
ここで発想を変えましょう。
どうせやるなら、受け身ではなく自分のために主体的にやりましょう。
コンピュータといういい道具もどんどん便利に使ってください。
記録をつければつけるほど、何かしらの気づきがあるはずです。
その気づきは、これからにいい影響をもたらしてくれますよ。

入ってくるお金は大切に。
出ていくお金は無駄なく効率的に。
手許に残るお金は、できるだけ大きく。

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